予防
歯の健康を維持することは多くの方々が望んでいますが、なかなか難しいというのが現状です。
そこで、逆に何が原因で歯が悪くなるのかを理解することにより対策を立てることが可能となります。
お口の健康を損なう大きな原因としては、虫歯、歯周病、過大な力(ブラキシズム)等が挙げられますが、
治療には総合的な判断が必要となります。
当院では検査、診断のうえ、各個人にもっとも合った予防法を提供できるよう心がけています。
以下では主な原因と対策について説明してあります。
虫歯
虫歯とは歯というカルシウムを主体にした結晶が、
歯の表面の細菌叢(歯垢)が作り出す酸により溶けていく現象です。
細菌は歯の表面に定着するための糊(菌体外多糖)を合成し、
一旦定着すると糊を作れない他の細菌もその集団のなかで一緒に増えていきプラークバイオフィルムを形成します。
プラークは、5%程度の砂糖液(通常、清涼飲料は10%以上の糖液)を口に含むと2-3分以内に酸をつくりだし、それが歯の成分を溶かします。
しかし唾液にはこの酸を中和する力があり、一度溶けだして歯垢の中に残っていたリン酸とカルシウムはまた時間をかけて歯の中にしみこんで歯の結晶は修復されます(再石灰化)。
歯は、脱灰と再石灰化を繰り返しており、そのバランスが崩れなければ虫歯にはなりませんが、間食が多かったり、
不規則な食生活でそのバランスが崩れることによりお口の中が酸性に傾きやすくなると虫歯になります。
また、全身疾患等による、唾液の減少によっても虫歯になりやすくなります。
以上から虫歯対策としては以下のことが効果的です。
虫歯の予防
- 全身の健康管理。
- 虫歯の原因となる歯垢をなるべく除去するような歯磨き方法を身につける。
- 規則正しい食生活をする。
- 間食は量ではなく回数を減らす(甘いものを頻繁に食べたり、ジュースを時間をずらして何回にもわけて飲んだりしない)。
- フッ素やキシリトールの利用。
- PMTC (Professional Mechanical Tooth Cleaning)。
Professionalは「専門家」,Mechanicalは「機械」、Toothは「歯」、最後Cleaningは「清掃」です。つまりPMTCとは「専門家による専用機械を使った歯の清掃」をあらわします(ここでの専門家とは通常歯科衛生士を指します)。PMTCによりより効果的なプラークバイオフィルムの除去を行うことができます(保険適用外)。
歯周病
専門的には複雑でいろいろ分類もされていますが、ここでは一般的なものについて説明します。
歯周病は感染症で、進行すると歯を支えている骨(歯槽骨)を壊していきます。
歯垢に存在する歯周病菌が主要な原因の細菌感染ですが、
単に歯周病菌だけでなく、多くの複合的要因(糖尿病、喫煙、ブラキシズム等)が関係します。
よって、個人差も激しく、それが治療を難しいものにしています。
歯周病の進行
歯肉が健康なとき、歯は歯周組織(歯肉、歯根膜、セメント質、歯槽骨)によってしっかり保持されています。
正常な歯肉は淡いピンク色で引き締まっています。
歯肉が炎症を起こすと、赤くつやがあることもあり、磨くと出血しやすく、触れると痛むことがあります。
炎症は歯肉に限局して仮性ポケットが出現します(アタッチメントロスなし)。
歯肉が炎症が進行してくると、発赤、腫脹が著しくなり磨くと出血します。
歯の支持組織にも炎症が進み、歯周ポケットが形成され骨の吸収も始まります(アタッチメントロスを伴う)。
歯周病がさらに進むと、歯の支えの多くを失い、骨吸収が歯根長の1/2以上になると歯はぐらつきはじめ、膿が出はじめて口臭もひどくなり、やがて歯が抜けてしまいます(アタッチメントロスを伴う)。
歯周病の予防
歯周病は成人の約80%が罹患しているといわれており子供以外は予防というより治療から始まる場合が多いのですが、
- 原因菌をなくすという観点から虫歯予防と同様の対策。
- 定期検診によるお口の中の管理(歯石の除去等)。
- 糖尿病など慢性疾患の予防、およびそのコントロール。
- 禁煙。
等が挙げられます。
過大な力(ブラキシズム)
人間は、食事をするとき以外にも歯をかみ合わせています。それが限度を超えている場合(非機能性咬合習癖)、歯および周りの組織に悪影響を与えます。
上記の歯周病の悪化を早めたり、歯がしみる、歯そのものが割れてしまうといったことを引き起こします。
ブラキシズムは以下の3つの型に分類されています。
上下の歯を臼の如くすり合わせる運動を行う。ギシギシと音を立て、咬頭に異常な力が働くので、歯質の崩壊を招きやすい。睡眠時に多く、一般に呼ばれる「歯ぎしり」はグラインディングを指す事が多い。
上下の歯を静的に強く噛み合わせる動作を言う。覚醒時に無意識に発現していることが多く、自覚症状は勿論、他覚症状もほとんど無いために発見が遅れることがある。
上下の歯を動的にカチカチと噛み合わせる動作を言う。
過大な力の予防
これも予防ではなく治療からとなりますが、まず自分がしているのかどうかが問題となります。
ブラキシズムは本人が自覚してない場合が多いので、その診断を受けることから始め、明らかにしていると診断した場合には咬合調整、スプリント療法、薬物療法等を行います。
また、定期的なかみ合わせのチェックも有効です。